♪… 地上の楽園 ツバル …♪

　30年近く前に誕生した世界で2番目に小さい国

　面積約26平方キロメートル、人口約1万人。バチカンを含めれば、世界で2番目に小さい国、それがツバルだ。1892年にギルバート・エリス諸島として英国の保護領に、1915年に同植民地となった。75年には、ギルバート諸島と分離し、ツバルと改名。その3年後には、選挙の結果を受けて晴れて独立。同時に、英国女王を元首とするイギリス連邦38番目の仲間に加わった。



　国名は、現地語で「立つ」を意味する「TU」と「8つ」を意味する「VALU」に由来。2つの島と7つの環礁島（珊瑚の島）から成る国だが、独立時、9つのうち8つに人が住んでいたことからこう名づけられた。2000年9月には、第55回国連総会にて189番目の国連加盟国に。05年には愛・地球博にも参加。「平和愛好国とのみ国交を持つ」との外交方針を貫き、日本とはもっとも親しい友好国のひとつとして交流を続けている。…♪

　地球温暖化の影響で島々は水没の危機に直面

　平均海抜が1メートル以下ともいわれるツバル。地球温暖化による海面上昇の危機が研究機関などから報告されているが、ツバルではすでに被害が深刻になり始めている。雑貨店を営むエマ・ジャックさんはこう話す。「数年前から被害がひどくなっていて、昨年は数回、高潮に襲われました。こんなこと、今まではなかったのに。島を横切る海岸近くの道路が冠水して、日常生活に支障をきたしたこともあります。ここ10年ほど、高潮は何度も経験してきましたが、ここまで潮位が高くなったのは最近のことです」。



　フナファラ島では、数十家族が暮らしていたエリアが海に洗われ、本島への移住を余儀なくされた人もいたという。もっとも被害が大きいとされるテプカ島では、植物の根が波に洗われ、砂地が徐々に削られたことで、なぎ倒されてしまった木々がごろごろと横たわっている。ほかにも、環境保護エリアに指定されている美しいヴァサファ島も、十数年後には完全に水没するといわれている。…♪

　平和な文化

　水没の危機を知りながらも、多くの人が島を出ない理由として、平和で静かであることをあげる。それほどまでにツバルは穏やかな国。首都フナフティ環礁には、ふたつの警察署があり、49人の警官が働いているが、さほど忙しくないようだ。アセラ・ペネウエタ巡査自身が「夜も昼も、ドアや窓に鍵をかけたことはないね」と話す。とはいえ、フォンガファレ島には刑務所があり、現在は5人が服役中だ。



「数年前に一度殺人があったけれど、本当にまれ。交通事故やけんかで捕まった人ばかり。監獄はふた部屋で15人まで収容可能だけど、いっぱいになったことはないよ」とティモ・アレ巡査も話す。刑務所は、ツバル内のどの建築物とも違い、柵に囲まれている。でも、その高さは腰程度だ。外からは青々とした芝生の上に建つ骨組みだけの小屋に座り、食事やゲームをする数人が見える。看守によると、彼らが服役囚だという。天気がよい日は、屋外で潮風に吹かれながら過ごす。ツバルでは、服役囚にも平和な暮らしが許されているのだ…♪

　ポリネシア文化

　見知らぬ外国人にも、笑いかけ、手を振ってくれる大らかなツバルの人々。成人は男女ともに大柄で、皆一様に朗らかだ。誰とでも、目が合えばにっこりとほほ笑み、「タロファ（こんにちは）」と言葉を交わす。見ず知らずの訪問者にも、話しかけてくれたり、バナナやパンを振る舞ってくれるなど、とても気さくだ。だが、海面上昇や深刻なゴミ問題などにさらされていることを考えると、彼らの陽気さを前に、戸惑いさえ覚えることも。



　祖国存亡の危機に直面しながらも、明るく生きている彼らには、ツバルを訪れる前に予期していたような悲壮感はまったくない。外から来た者のほうが、かえって危機意識を募らせてしまうほどだ。実際に人々と話をしてみると、不安を訴える声よりも、「いざ、島が沈むとなったときに逃げればいい」「まだ大丈夫」という声を多く聞く。そののんびりとした様子こそ、良くも悪くも、ポリネシア文化に由来する大らかな国民性を象徴しているのかもしれない。…♪

　ツバルの宝

　国としては貧しいが、子孫繁栄という意味では、日本よりよほど豊かなツバル。この国の家族はおおむね子だくさん。女性たちは、18歳で結婚できるが、21歳になるまでは親の承諾が必要。結婚する時期は24～26歳ぐらいがもっとも多いというが、結婚するとすぐに子供をもうけるのが普通だという。人口は増加する一方なのだ。



　生まれた子供たちは、陽気な笑い声と、助け合いの精神に満ちたコミュニティで、すくすくと育つ。先進国の子供たちのようにゲームやインターネットで遊ぶ代わりに、ヤシの実でサッカーをしたり、自分たちで獲った魚を生のまま海水で洗って食べたりとたくましい。夕方になり少し涼しくなってくると、週2度しか使われない滑走路や、船着場は子供たちの格好の遊び場となる。



「将来はお父さんみたいな漁師になりたい」と照れながら笑う少年。「お医者さんになってツバルの人たちを救いたい。ツバルの人はみんな優しい。そういう大人に私もなりたい」と話す少女。未来を担う彼らこそが、ツバル最大の宝である。…♪





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